英語学習ソフト「ゆ〜いんぐ」Dos版の活用実践記録です。
 
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1.複合的な活用を目指して
 
 英語科の授業でコンピュータを使用するとき、電子問題集のようなドリル的な使い方、辞書検索や文例検索を活用したデータベース的な使い方、インターネットなど通信を使用したコミュニカティブな使い方など、いろいろな活用方法がある。  
 特に「新しい学力観」に立った場合、データベース的な利用による、英単語の規則性の発見、調べた結果を別な形に再構築し法則性を発見するといった創造的な活用方法、またインターネットやパソコン通信等を利用したインタラクティブな活用方法が主流になると思われる。  
 現在私が使用している自作ソフトは、ドリル実行機能を中心としているが、そういった創造的な学習機能も少しばかり含む、様々な使い方を想定した統合的なソフトである。単にドリル実行ツールだけでなく、電子黒板的な機能、フラッシュカード機能、英文暗記支援機能、そして辞書検索、文例検索機能など、授業の場面に応じた複合的な使用が可能になっている。  
   
2.実際の授業の中で

(1)電子問題集として
 
  わざわざ紙媒体でできることまで、コンピュータを使用して行うことは避けたいところであるが、コンピュータならではの特徴を生かした機能を付加することによって、紙の問題集にない効果をもたらすことがある。  
 一単元が終わるたびに、単語や連語の復習として20分程度取り組ませているが、個別に練習ができるということや、スペルの間違いを正確に教えてくれるということ、すぐに採点しコメントをつけてくれることで、生徒達の人気がいちばん高いツールである。英文のフォントを数種類用意し、大きく表示させたり、色やデザインに一工夫凝らして、生徒を飽きさせないようにしている。  

(2)英文の暗記補助として 
 
 教科書の本文を暗記する時に、その補助としてこの機能を使用している。データ登録した英文を拡大して表示させてから、用意されたいくつかのマスクの種類から、適当なものを選んで英文の一部を隠すようになっている。録音テープをききながらマスクされた部分を聞き取ったり、前後の文脈から推測する学習に役立っている。  
 霧がかかるように画面全体がフェードアウトする機能では、消えないうちに暗記しようとする生徒達の歓声で授業も盛り上がったものである。この機能は個別に行っても効果があるが、全体に一斉に提示して行っても効果が十分に感じられた。  

(3)英和・和英辞書として 
 
 3種類の辞書を使い分けることのできる英和・和英辞書の機能は、単に英単語の意味を調べさせるだけでなく、生徒にデータベースの概念、検索の概念を教えるのにも十分役にたった。  
 前方一致や後方一致、あるいは完全一致などを教えると生徒は面白がって様々な単語を調べていた。例えば語頭にinのつく単語を抽出して、その意味の共通性に驚いたり、日本語からの検索では類義語を多く見つけて感嘆したりと、英語の学習というより、検索学習となる場合もあった。  

(4)英単語、英文検索ツールとして 
 
 最近は教科書の指導書に全本文をテキストファイル化したものが添付されている。このファイルをデータとして登録すると、簡単な英単語、英文用例検索システムができあがる。この自作ソフトには日本語訳もつけて、日本語からも検索できるようにした。  
 膨大な量の英文の中から英単語を検索し、その使われ方を調べることは、手作業では手間がかかる上に、見落としや間違いも多いものである。しかしコンピュータを使用した検索では見落とし、間違いがないばかりでなく、複雑な検索でも極めて短時間に実行することができる。そして、その単語がどの様な場面で使用されるかについての考察もきわめて容易にできる。  
 例えば、have という動詞がどの様な場面でどの様な使われ方をするのか、そしてその頻度はどれ位なのかといったことを調べるのに要する時間は、中学校3年間の教科書全本文でさえほんの数秒である。  
 自作ソフトの英文用例検索機能を使用する場合は、キーワードを検索させることで、その使われ方を調べ、英作文をする上での援助とさせた。  

(5)フラッシュカードとして 
 
 紙のフラッシュカードで英単語の意味の確認をすることは、授業ではよく行われることである。自作ソフトの中のこの機能は、単語カードを用意し任意の時間で日本語と英語、あるいはその逆の入れ替えをするだけの機能である。かなり大きなフォントを使用しており、2人1組で競争しながら発音したり、意味を言ったりする姿が見られる。個別に行ってもよいし、教師用コンソールから一斉に流して行ってもよい。

3.成果と今後の課題
 
 コンピュータを使用した英語学習はとかくドリル学習に終始しがちであるが、そのような使い方でも生徒は十分に楽しみながら行っている。また、それぞれの生徒の力に合わせたスピードで学習ができるという利点は大きなものである。  
 ドリル学習やフラッシュカードを使用した学習などは、生産的かつ創造的な学習活動にはならないが、辞書機能や英文検索機能による学習は、英作文等に生かせる点で、問題解決的な学習につなげることができた。 今後はさらに他とのコミュニケーションを図るような使い方ができるソフトの開発を模索して行かなければならないと考える。  

(参考)  
 本ソフトは中学校、高校用に開発しており、教材内容は普通のテキストファイルであるので、市販のワープロソフト等で改編、作成が可能である。プログラムはPC98シリーズのDOS上で動作する。開発言語はボーランド社の「ターボC2.0」である。  
  


                                                                
「教育と情報」1997年11月号掲載
  
 
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